隅田川の桜並木は、じつは将軍が作った場所だって知っていますか?
先日、浅草でお花見をしてきました(そのときの記事はこちら)。隅田川の桜並木、待乳山聖天、長命寺の桜餅……どこも素晴らしかったのですが、帰ってからふと思ったんです。「いつからこんなに浅草周辺に桜が多いんだろう?」と。
調べてみたら、これが面白くて。徳川将軍が関わっていたり、震災で一度失われていたり、思った以上に深い歴史がありました。
知ってから浅草を歩くと、景色の見え方が変わるかもしれません。

そもそも「花見」はいつから始まった?
奈良・平安時代:はじめは「梅」だった
実は花見のルーツをたどると、最初に愛でられていたのは桜ではなく梅でした。
奈良時代、貴族たちは梅の香りを楽しみながら歌を詠む風流な行事として花見を楽しんでいました。万葉集にも梅を詠んだ歌が多く収録されています。
桜が主役になったのは平安時代から。貴族の間で「花といえば桜」という感覚が広まり、花見は桜の下で歌や音楽を楽しむ雅な行事として定着していきます。
ただ、この頃の花見はあくまで貴族のもの。庶民には縁のない文化でした。
江戸時代:庶民へ広がった花見文化
花見が庶民の文化になったのは、江戸時代に入ってから。きっかけのひとつが、8代将軍・徳川吉宗の政策でした。これが、隅田川の桜の歴史と深く関わっています。
隅田川の桜はなぜ生まれたのか
徳川吉宗が桜を植えた理由
享保年間(1717〜1736年頃)、徳川吉宗は隅田川の堤や飛鳥山(現在の北区)に大量の桜を植樹しました。

その理由は、じつは2つあります。
ひとつは庶民の娯楽のため。吉宗が将軍に就いた頃、江戸の庶民は質素倹約を強いられており、娯楽も限られていました。花見の場所を整備することで、庶民に気晴らしを与えようとしたのです。
もうひとつは治水のため。桜の根は地中深くまで張るため、川沿いに植えることで堤防を強化する効果がありました。娯楽と実用を兼ねた、なかなか合理的な政策です。
こうして隅田川の桜並木が誕生し、江戸の庶民にとっての一大花見スポットが生まれました。
当時の花見の様子
吉宗の政策が功を奏し、隅田川の花見は江戸随一の賑わいを見せるようになります。桜の季節には屋台が立ち並び、昼夜問わず人々が集まる祭りのような雰囲気だったといいます。
幕末に活躍した浮世絵師・歌川広重の「名所江戸百景」にも、隅田川の桜が描かれています。満開の桜の下を行き交う人々の様子から、当時の賑やかさが伝わってきます。江戸時代の人も、現代の私たちと同じように桜を楽しんでいたんですね。
また、隅田川近くには江戸最大の遊郭・吉原もあり、花見シーズンは街全体が特別な雰囲気に包まれていたといいます。
待乳山聖天・浅草寺と桜の関係
花見で訪れた待乳山聖天と浅草寺も、隅田川の歴史と切り離せない場所です。
浅草寺の創建は628年。漁師が隅田川で黄金の観音像を引き揚げたという伝説が起源で、東京最古の寺院のひとつです。江戸時代には浅草寺の門前町として街が発展し、隅田川の花見と合わさって一大観光地になりました。
待乳山聖天は595年の創建とされ、小高い丘の上から隅田川を一望できる場所として、江戸の名所のひとつに数えられていました。吉宗が桜を植えた頃には、すでにこの丘から花見の景色を眺める人々がいたはずです。
明治〜現代|隅田川の桜が歩んだ変遷
関東大震災と戦争で失われた桜
長く愛されてきた隅田川の桜ですが、近代に入って大きな試練を迎えます。
1923年の関東大震災。地震と火災により、隅田川沿いの桜の多くが焼失しました。翌1924年、被災地の復興事業として隅田公園が整備され、桜が植え直されます。震災の傷跡を癒すように、新たな桜並木が生まれました。
しかしその後、太平洋戦争の空襲でふたたび桜は失われてしまいます。
市民の手で復活した現在の桜
戦後、隅田川の桜は市民や団体の寄付・活動によって少しずつ復活していきました。
現在の隅田公園には約600本の桜が咲き誇り、毎年春には多くの人が花見に訪れます。その大半を占めるのがソメイヨシノですが、じつはこの品種も東京生まれ。江戸〜明治期に現在の駒込・染井村の植木職人たちによって品種改良された、いわば東京オリジナルの桜です。
歴史を知って浅草を歩くと面白い
隅田川の桜並木は、ただ「きれい」なだけじゃなく、300年以上の歴史が詰まった場所でした。
徳川吉宗が植えた桜が庶民の娯楽になり、震災や戦争で失われながらも復活し、今も毎春たくさんの人を集めている。そう思いながら歩くと、いつもの景色が少し違って見えてきます。
浅草寺も待乳山聖天も、江戸の人々が同じように訪れていた場所。タイムスリップしたような感覚で散歩してみると、また違う楽しさがあるかもしれません。
今年の桜は終わってしまいましたが、歴史を頭に入れて来年また浅草を歩いてみてください。きっと違う景色が見えてくるはずです。
浅草散歩のモデルコースはこちらの記事にまとめています👇
【浅草花見コース】展望台・待乳山・桜餅・隅田川を1日で満喫した話


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