「IT業界に入りたい。でも未経験だし、SESなら採用してもらいやすいって聞いた。」
もし今あなたがそう考えているなら、この記事を読んでから判断してください。
私はSES企業に入社して数年、複数の客先現場を渡り歩いてきました。ITエンジニアとしてのキャリアのスタートはSESでした。当時の私は「とにかくIT業界に入れればいい」という気持ちで、深く考えずに入社を決めました。でも今なら言えます。もし事前にSESの仕組みと落とし穴を知っていたら、もっと違う選択ができたかもしれないと。
この記事では、SESに入って感じた「やばいな」という瞬間と、実際に起きやすいトラブルを正直にお伝えします。SESを全否定するつもりはありません。でも、知らないまま入るのと、知った上で選ぶのとでは、まったく違う未来になります。

SES(客先常駐)って何?3行でわかる仕組み
まず基本の確認から。SESとは「システムエンジニアリングサービス」の略で、簡単に言うと「自分の会社から別の会社に派遣されて、そこで働く働き方」のことです。
あなたはA社(SES企業)に正社員として雇われます。でも実際に毎日出勤するのはB社(客先企業)のオフィス。B社の仕事をB社の人たちと一緒にこなす日々が続きます。給料はA社から払われますが、働く場所も仕事内容もB社が決める。これがSESの構造です。
正社員との決定的な違い
一般的な「正社員」は、自分の会社の中で仕事をして、自分の会社の上司に評価されます。でもSESエンジニアは「雇っている会社」と「働く場所の会社」が別々という二重構造の中にいます。
この違いが、あとで紹介するさまざまな問題の根っこになっています。
なぜIT初心者がSESに入りやすいのか
答えは単純で、SES企業はエンジニアを「人材として他社に貸し出すビジネス」をしているからです。人数を確保することが大事なので、未経験でも積極的に採用します。「未経験歓迎」「研修あり」「入社後にスキルアップ」という求人が多いのは、そういう理由です。
入り口が低いこと自体は悪いことではありません。問題は、入ってからの環境が整っているかどうかです。

現役SESエンジニアが感じた「やばいな」と思った瞬間
自分の会社には基本いない
入社して最初に気づいたのが「自分の会社って、どこ?」という感覚でした。
毎日出勤するのは客先のオフィス。自社には全く行かず、同期や先輩がどこで何をしているかもわからない。自社の文化もほとんど知らないまま、気づけば「なんとなく客先の社員」みたいな存在になっていました。
孤立感というか、「私はどこに所属しているんだろう」という感覚は、精神的にじわじわきます。
客先のルールに縛られてスキルが選べない
客先はすでに使う技術が決まっています。現場がJavaを使っているならJavaを覚えるしかない。自分が「Pythonを勉強したい」「クラウドに挑戦したい」と思っても、現場に必要なければ仕事では使えません。
学べる技術は配属先の案件次第になります。どうしてもやりたいことがあっても案件がなければ、そこに行くことはできません。
学びたい技術を業務で積み上げることが難しく、プライベートで自己学習するしかない状況が続きます。これが続くと、「現場に使われているだけ」という感覚になっていきます。
評価されているのが誰かわからない
自社の上司は、自分の仕事をほとんど見ていません。客先の担当者は仕事を見てくれているけれど、給与や昇進を決めるのは自社の上司。「結局、誰に評価されているの?」という状況が生まれます。
頑張っても誰にも届かない感覚——これが一番モチベーションを削がれた瞬間でした。
SESで起きやすい「よくある落とし穴」5選
1. 同じ現場に何年も居続けてスキルが止まる
SESの現場は、一度入ると「使えるから」という理由でずっと同じ場所に置かれることがあります。
最初は新しいことを覚えますが、2年・3年と同じ現場にいると、やることが変わらなくなります。スキルが止まっているのに時間だけが過ぎていく。気づいたときには「数年いたのに、何も変わっていない」という状況に陥ります。
当然派遣先の企業は、自社の社員の育成を優先します。派遣社員には誰でもできるような仕事が振られるのです。
2. 給与が上がる仕組みがない
SES企業の売上は「エンジニアを客先に貸し出す時間」で決まります。あなたが技術的に成長しても、客先に「今の単価でいい」と言われれば、自社の収入は変わらない。収入が変わらなければ、あなたの給与も上がりにくい。
「頑張ったのになぜ?」と思っても、それはSESの構造的な問題でもあります。
3. 転職しようとしても職務経歴書が書けない
転職活動をしようとして、ここでまた壁にぶつかります。
SESの仕事は「〇〇システムの保守・運用」「△△プロジェクトの一部担当」という形が多く、自分が何を決めて、どんな成果を出したかが書きにくいのです。「指示されたことをやっていた」という経験では、職務経歴書に書ける「実績」になりにくい。
転職市場では「何を作ったか・何を改善したか」が問われます。それが書けないと、せっかくの経験が活かせません。
4. 人間関係が二重になる(自社 vs 客先)
自社の上司にも気を遣い、客先の担当者にも気を遣う。板挟みになることが多く、どちらかから無理なことを言われても、どちらにも強く言えない立場になりがちです。
特に「客先の担当者から無理な残業を求められているのに、自社の上司は状況を把握していない」という場面は、SESあるあるの一つです。
5. 「正社員だから安定」は幻想だった
SES企業の正社員でも、客先との契約が終われば別の現場に飛ばされます。スキルに見合った現場が見つからなければ「待機期間」が発生します。場合によっては減給になるケースも。
「正社員だから安心」という感覚は、SESに限って言えばあまり当てはまらないことがあります。
じゃあSESに入ってしまったら終わり?→ No

ここまで読んで、暗くなってしまった方もいるかもしれません。でも、答えははっきり「No」です。
私自身、SESにいながらできることを積み上げて、今の働き方に辿り着きました。
SESにいながらできること
- 業務外でポートフォリオを作る:自分で作ったものがあれば、職務経歴書に書ける実績になります
- 資格を取る:基本情報・応用情報・AWSなどの資格は、スキルの証明になります
- 現場での動き方を変える:受け身から提案型へ。「こうすればもっと良くなる」を言える人材を目指す
- 転職エージェントに登録して市場価値を知る:今の自分がどう評価されるか、知るだけでも大きく違います
現場に依存しながら、並行して自分の価値を高める。それが、SESから這い上がる現実的な方法です。
這い上がるための最初の1ステップ
まず、自分が「何ができるか」を整理してみてください。
今日の仕事で使った技術、触れたシステム、対応したトラブル。日報感覚でメモするだけでも、半年後には立派な「職務経歴の素材」になります。
何か大きなことをする必要はありません。今日から始められる、小さな記録が最初の1歩です。
まとめ:知らなかった自分を責めなくていい、でも今すぐ動こう
SESに入ったことを後悔している人も、今まさに迷っている人も、どうか自分を責めないでください。
SESの構造的な問題は、入る前には見えにくいものです。「ITに入れるなら」という気持ちで選んだことは、何も間違っていません。私もそうでした。
ただ、知った今からは変われます。
- 今の環境でできることを探す
- 小さくても自分の実績を積む
- 情報を集めて、次の選択肢を広げていく
SESにいても、成長できます。でも「流されるだけ」では変わりません。
知らなかった過去は仕方ない。でも、知った今日から動けるかどうかは、あなた次第です。
この記事が、あなたの最初の一歩を後押しできたなら嬉しいです。

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